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こんにちは。最近は気温もかなり上がったこともあり、街中ではすでに半袖姿の方もちらほらと見かけます。季節の変わり目ということもあるので体調には十分気をつけていただきたい次第です。店頭では少しずつ半袖ユニフォームやTシャツなども買っていただくお客さんも増えてきています。SNSでは紹介していない商品もあったりするので宝探し感覚でふらっと足を運んでいただけたらと思います。
ということで今日は好きな映画を1本ご紹介します。自分が洋画では最も好きと言っても過言ではない「Elephant」という作品。久しぶりに見返すとやはり名作でした。その余韻からそのままパソコンと向き合って今に至ります。
2003年に公開されたガス・ヴァン・サント監督が手がけたアメリカ映画です。1999年4月20日にコロラド州で起きた「コロンバイン高校銃乱射事件」をもとに制作されています。実話に基づいていますが、本作は事件の本質とは少し違います。
何の変哲もない高校に通う生徒たちはそれぞれ色んな悩みを抱いえながらも平凡な学校生活を送っています。しかし、そんな一日は2人の生徒の銃乱射によって壊れました。
あらすじはあえてこれくらいで抑えておきましょう。まずこの映画の面白い点はプロの役者は3人、しかも大人のみです。そして生徒は実際の高校生3000人からオーディションで選ばれています。セリフや役どころに彼らの実際の体験や生活を盛り込んであり、役名も彼らの本名だというのはリアルを追求した末の考えではないでしょうか。凄すぎる。
この映画は作品内で2つの区切って分けることができます。どういうことかというと事件を起こした2人の生徒の被害者視点と加害者視点に切り替わっています。画面いっぱいに映し出された空を区切りとして冒頭と中盤と最後に差し込まれています。中盤の暗雲の立ち込める空が流れると物語は一変するのです。
そしてこの映画は登場人物をTPS視点で捉えるシーンが多くあります。TPS視点とは「サードパーソン・シューティング」を略した言葉、つまり三人称視点でゲームで言えばグラセフだったりモンハンを想像してもらえたらと思います。そして同じ時系列を違う視点で映し出す撮影方法には感銘を受けました。
画面比はスクエアに近いワイドではない比率で撮影されています。インタビューで監督は「登場人物たちの生への没入を強めるのにぴったりである」と答えています。何気ない要素ではありますがパンフォーカスから演者にピントを切り替えたりとカメラワークが凄すぎる。きっとあの映像ディレクターもこの映画の影響は大きいんじゃないかと勝手に思ったりするときもあります。
後半で緊迫感が漂った展開が続くものの映画全体を通すとテンポ感やBGMも大きな切り替わりはありません。しかしそれがよりリアルな学生の日常として映し出されているように感じます。前半の何気ない日常から銃殺するシーンへの切り替わりは展開としては盛り上げたくなるところをずっと同じテンポ感で作り上げられ、他の作品にはない良さを感じます。ここでのテンポ感はカットの切り替わりのことを主に指しています。
そしてこの映画のすごいところは印象的な場面以外のそれをつなぎ合わせるためのセリフも何もないシーンが多いところです。むしろそういう場面を寄せ集めたかのような作品。そんなシーンは日常の余白と表す人もいて自分もそれがしっくりくるように感じます。そういうシーンに「なぜこういう事件が起こったのか」、「なにが引き金だったのか」をじっくりと考えさせるという監督の意向を感じます。
好きなシーンを上げるなら銃乱射した2人が事件当日に一緒にシャワーを浴びるシーンです。「今日死ぬんだよな。キスしたことないんだ。おまえは?」と聞いてキスをします。この映画のキャッチコピーは「キスも知らない17歳が銃の撃ち方は知っている」。このシーンで2人の感情を想像すると込み上げてくるものがあります。
グロいシーンが苦手な方にはあまりオススメできませんが、これほど作り込まれていなさそうで作り込まれた映画は他にないでしょう。自分は何回も観た大好きな映画ですが、観るたびに登場人物それぞれの視点になって観るとまた違った面白さがあります。気になった方は是非。観た後にビハインドザシーンも合わせて観てみてください。